今、日本のメディアは東京オリンピックの話題で持ちきりです。
ワイドショーでは連日のように、五輪をやるのかやらないのか、 Xデーはいつなのか?
そんな終わりのない議論が繰り返されています。
さらに、ニュースで目にする記者会見では、
日本の首相が死んだ魚のような目で、壊れたラジカセのごとく、同じセリフを再生しています。
最近、欧米の友だちからよく聞かれること
最近、欧米の友だちからよく聞かれるのが、
日本はオリンピックについてどう思っているの?
オリンピック本当にやるの?
と言った内容です。
話の流れでそうなることもありますが、久しぶりに友人から突然メッセンジャーで
「どうなの?オリンピック?」とストレートに聞かれることも。
そんなとき、私はストレートに自分の考えを述べます。
欧米は夏のオリンピックは強い競技が多いので、選手もやる気が満々だということですが、それでも私の欧米(主にオーストラリアと米国)の友たちは皆、メダルよりも人の命が大事だと口をそろえて言います。
オーストラリアでは先週からまた1週間のロックダウンらしいですが、日本が1度もロックダウンしないことをとても不思議がっていました。
確かに、今年の全豪オープンの際にテニスの試合のせいでロックダウンされた!と仲の良い友人も散々文句を言っていましたが、それでも、ロックダウンは必要だと考えているようです。
子どもたち(国民)にブーブー文句を言われても、自分の子どもを守るためにやるべきことはやる!
自分が住んでいたからではないですが、オーストラリアにはそうゆう毅然としたところがあり、容赦なく圧力をかけてくる他国に対しても、毅然とした態度で屈しないところが私は好きです。
常に周囲の顔色を伺う日本とは大違いですね。
五輪開催の是非に答えはない
五輪は、議論が十分になされないまま、開催することを前提で日本政府がゴリ押ししている点が大問題だと思います。
五輪はやれば良いこともたくさんあります。
観光業や宿泊施設などはそれなりの恩恵を受けるでしょう。
選手はこれまでの苦しい練習が報われるかもしれません。
開会式のためにいろいろ頑張ってきたスタッフやパフォーマーの方々も報われるでしょう。
一方で、海外選手やメディアで集団感染が起こった場合や、それが一般市民に飛び火した場合、万が一医療崩壊したら、トリアージは相当難しくなりそうです。
一般市民の90歳の日本人を先に治療するのか、競技中に大怪我をして呼吸困難に陥った若い外国人選手を先に治療するのか?
どちらを優先しても国際問題に発展しそうです。
また、日本入国後のPCR検査で、チーム競技で陽性の選手が一人出た場合、チーム全体が出場できなくなるのか、それともその人だけを外すのか?
陽性でなくても、偽陽性になった場合、競技には参加できるのか?それとも大事をとって棄権させるのか?そうやって棄権させた後に検査でやっぱり陰性だった、競技にだって出られていたのに!なんて事になったら、裁判沙汰ですね。
今年の五輪はやっても、やらなくても誰かが喜び、誰かが不幸になる、そんな大会になりそうです。
日本政府の悪い癖ー説明責任を軽視
欧米の友たちと話していて気付いたのは、海外の多くの人々が日本の立場をきちんと理解していないことです。
日本が東京五輪を中止にする権利を直接持っていないことや、中止になった場合の多額の賠償金の話などは、誰もが「知らなかった」という反応を示します。
日本は空気を読む、行間を読む文化であり、「わかるでしょ?察しておくれよ」の傾向がありますが、日本の置かれたこの苦しい立場をもっと内外にアピールするべきだと思います。
そして、首相は、なぜ五輪をするのか、なぜIOCに反対しないのか、五輪をやるとどんなメリットやデメリットがあるのか、そのためにどのような対策を取るのかなどなど、台湾の陳時中保健大臣のように、記者の質問が終わるまで何時間でも根気よく丁寧にやるべきです。
それを国民に丁寧に説明をして、それを踏まえて国民が納得するかどうかをきちんと問うこともなく、ただただ録音の再生ボタンを押すかのごとく
「最善を尽くしまーす」「やりまーす」「やる方向で進めていまーす」
では話になりません。
私は、五輪をやるかやらないかよりも、日本の政府や首相に、台湾の陳氏のような真摯な姿勢が欠片も見られないことに失望しています。
オリンピック(五輪)は世界最大のお祭り
私は20年前にシドニーでオリンピックを観ました。
その時に思ったのは、オリンピックは大勢の世界中の人が一同に集まって、選手だけでなく、芸能人もメディアも一般市民もその家族もみんなが参加して楽しめる
世界最大のお祭り、スポーツの祭典
だということです。
過去に、世界選手権の通訳に参加したことがありますが、世界選手権などとは桁違いの人数と国の数です。
お祭りなのだから、開会式の数日前から開催都市はものすごく盛り上がります。
シドニー五輪の時も、至るところに特設会場が設けられて、大会を盛り上げるライブや催し物などのイベントが繰り広げられました。
各国から続々と選手団やスタッフ、メディアなどが集結するに従い、街の雰囲気もだんだん熱気を帯びてきて、
「あ〜いよいよ始まるんだな!」
というワクワクとドキドキが徐々にピークに上がってきました。
選手も観客もこのお祭りに心を躍らせていたのです。
私が経験したオリンピック
五輪は選手にとっては真剣勝負の場なのでしょうが、
オリンピックってなんなんですか?
と問われたならば、
私にとっては、めちゃめちゃ大きなお祭りです。
お祭り大好きなんで、行きたいですし、観たいですし、騒ぎたいですよ!
でも、今果たして、世界は、日本は、お祭りをする気分になっているんでしょうか?
ねじり鉢巻きをして、ちゃんと太鼓を叩いて応援する準備はできているんでしょうか?
テレビでは、大会ボランティアに参加する人が、大きくTOKYO2020と書かれたユニフォームを着て電車に乗るのが怖いと言っていました。
せっかく時間を割いてボランティアをしてくれるのに、かわいそうです。
立川の病院の窓ガラスには「もうカンベンオリンピックむり!」
の文字が大きく貼られています。
1年以上に及ぶコロナとの戦いで疲れた医療従事者の悲痛な叫びです。
一番オリンピックをやりたいのは選手たち本人だと思いますが、選手だって、ちゃんと応援してもらえる状況で試合に臨みたいと思っているはずです。
選手が世界最大のスポーツの祭典で金メダルを取った後、
「金メダルを取ったとはいえ、あのお祭りはコロナで強い選手はほとんど参加してなかったよね」
とか、
「メダルは取れたけど、たくさん人も亡くなったよ」
などと言われては、かわいそうです。
毎回オリンピックの閉会式で、IOC会長が言うセリフがあります。
This is the best Olympics ever!!(今回が史上最高のオリンピックだった)
この言葉を聞いて開催国は安堵し、大会はクライマックスを迎えるのです。
普段見られないほど多くの数の国の人が一堂に会するオリンピック
この世界最大のお祭りをする心の準備は本当にできているのでしょうか。
残念ながら、私はそうは思いません。
オリンピックの醍醐味はフェスティブな雰囲気と盛り上がりにあると思います。
ギャラリーのいないお祭り。
ウキウキワクワクのないお祭り。
観客のいない中で孤独にお神輿を担ぐ選手。
そんな状況になったら、これまで人生をかけて戦ってきた選手がかわいそうだし、もうそんなのお祭りでもオリンピックでもなんでもないからです。
でも、もしもオリンピックを強行することになったら、もう決まってしまったことなので、全力で選手を応援してあげたいと思います。
ボランティアの人々にも感謝したいと思います。
みんなが揃いも揃って不幸になる状況は避けたいからです。
でも、それで人が死んだって、誰もその責任を取ろうとはしないでしょう・・・。
直接的ではなく、その余波で間接的に亡くなったり、傷ついたりする人が出てくるかもしれません。
毎晩のように、国別メダル数の代わりに、大会死者数が発表されるかも知れません。
無責任な大人だと言われようが、元々が筋の通っていない支離滅裂な大会である以上、庶民にはどうしようもないのです。
世の中は弱肉強食。
ドラマ「ドラゴン桜」で「お前ら、搾取されたくなければ勉強しろ!」というのがありました。
私たちは搾取されているどころか、それにすら気づいていないことがあります。
東京五輪の閉会式で、
This is the worst Olympics ever!(史上最悪のオリンピックだった)
とならないよう、願うばかりです。