東京では新型コロナウイルスの感染が爆発し、医療崩壊が起きています。
デルタ株が猛威をふるい、病床が逼迫しているため、もう普通の怪我でさえ救急搬送先がなさそうで、ちょっと怖いですね。
今日は英語学習者の方の参考になればと思い、記事を書いてみました。
- デルタ株は英語でなんという?
- 新型コロナウイルスはcoronavirusとはあまり言わない!英語での主流の呼び方とは
- ワクチン接種の回数はJab
- コロナ禍で生まれた新語 "Covidiot" と"Covidiocy"
- 新型コロナにまつわるおまけの表現
デルタ株は英語でなんという?
そんなデルタ株を英語ではdelta variantと言い、記事などでよく見かけます。
また、株をstrainということもあります。
以下は去年オーストラリア人の友達とのメッセンジャーのやり取りのスクショですが、ここではstrainのほうが使われています。
1行目に
"I've heard that the strain we have here now is much more aggessive"
とあります。
このように、strainは一般人がウイルスの株の意味として普通に日常で使っているのが分かります。
文中のhereはオーストラリを指しています。次の行のWeも当然オーストラリアのことを指しています。
彼女がなぜオーストラリアの株のほうがアグレッシブだと言っているかというと、当時はまだ日本は欧米に比べて感染者数も死者も圧倒的に少なく、欧州株のほうが当時日本で感染が広がっていた武漢のオリジナルの株よりも感染力が強いのではと言われていたからです。
variantもstrainもどちらもdelta strain, delta variantと「デルタ株」の意味で使っているのを見聞きしますが、variantの元々の定義は「変異体」「変異型」という意味、一方strainは「株」ですので、variantのほうがより変異したものだぞ!mutate(v. 変異する)したんだぞ!という含みが強い単語です。
以下の英文を読んでみましょう。
Viral load is roughly 1,000 times higher in people infected with the Delta variant than those infected with the original coronavirus strain, according to a study in China.
キーワードに下線を引きました。
(単語)
viral load ウイルス量
Delta variant デルタ株
original coronavirus strain 原株(武漢原株)
(日本語訳)
中国のある研究によると、デルタ株感染者のウイルス量は、原株の感染者の持つウイルス量の約1000倍である。
尚、「懸念される変異株」のことをWHO(世界保健機構)はVOCsと呼んでいます。
VOCs=Variants of Concern(懸念される変異株)
これは文字通り、新型コロナウイルスの中でも感染力が高くて感染による症状が重く、ワクチンの効力や、現在使用・開発が行なわれている治療薬の薬効などに影響を与える懸念すべき株のことを指しています。
参考URL : Tracking SARS-CoV-2 variants
新型コロナウイルスはcoronavirusとはあまり言わない!英語での主流の呼び方とは
さて、日本で「新型コロナウイルス」と呼ばれているこのウイルスにも正式名称があります。
です。
SARS(重症急性呼吸器症候群)と聞けば、致死率が高くて血の気が引きますが、この新型コロナウイルスも同様にSARSを引き起こすウイルスの一種なので、このような名前がついています。
でも、この言葉をメディアなどで見聞きすることはほぼありません。
また、coronavirusとフルネームで言うことも話し言葉ではあまりありません。
では英語で話す時は一般にどう呼んでいるのでしょうか。
正解は
COVID-19
です。
COVID-19のDはdiseaseのDで、この単語は新型コロナウイルスによって引き起こされる病気のことを指しています。WHOが命名しました。
ここでCDCのサイトに記載されている例文を見てみましょう。
About the Delta Variant: Vaccines continue to reduce a person’s risk of contracting the virus that cause COVID-19, including this variant.
デルタ株について書かれた文の下線部分を見てみると、COVID-19を引き起こすウイルスとあります。
ここからも、COVID-19(単独でCOVIDともいう)は厳密にはウイルスが原因の病気自体を指す言葉だということが分かります。
ただ、実際には、ウイルス自体を指すときと病気との両方で使われている印象があります。
例えば、I can't get COVID. (自分がコロナに感染するはずがない)のように使うのですが、これは日本人が「コロナのせいで」という時に、「コロナウイルス」と「コロナによる肺炎」を区別せず曖昧にしているのと同じような感覚だと思います。
英語(口語)ではcoronavirusという言葉よりもCOVID-19ということのほうが圧倒的に多いです。
ちなみに、新型コロナウイルスのワクチンはCOVID-19 vaccines、コロナの免疫はCOVID-19 immunityです。ワクチンの効果がどれくらいかを尋ねる時は、
"How long does COVID-19 immunity last?"
などと言ったりします。
また、今日本には第5波が来ていますが、これはCOVID surgeなどと言ったりします。
例えば、Tokyo is experiencing its 5th COVID surge. (東京はコロナの第5波を迎えています)というふうに使います。
ワクチン接種の回数はJab
SNSでも最近ワクチン打ったという投稿が多数見られるようになりました。
私も今月ファイザーのワクチンを接種しました。これを英語にすると、
I had my Pfizer jab this month.(今月ファイザーを接種した)
となります。
Jabはボクシングのジャブと同じ単語で、注射や予防接種を指す口語です。shotと同じ意味で、Grab a jabで接種するという意味になります。grabは掴むという意味で、有名な東南アジアの乗り合いタクシー「GrabTaxi(現在はGrab)」の名前からもわかるように、何かをつかんだり、タクシーなどを捕まえたりする意味があります。そこから想像すると、ワクチン接種をゲットする的なニュアンスが伝わると思います。
1回目の注射はfirst jab、2回目はsecond jabです。
I'm getting my second jab next week.(来週2回目を接種するよ)
2回目が回数として規定されているワクチンを2回打ち終わることをfully vaccinatedと言いますが、このfully vaccinated(ワクチンを規定回数接種完了後)の人がワクチンと同じウイルスに感染することをbreakthrough caseと言います。最近日本語でもカタカナで「ブレークスルー」と言われているみたいですので、聞いたことがあるかもしれません。
ワクチンと言えば、最近見た米国のニュースの一節でJoseph Changs医師が言っていた言葉が印象的だったので載せます。
ニュースアンカーの「ワクチン接種を進めますか?」というというに対して以下のように答えました。
ちょっと長いですが、コロナ関連の表現も学べるので読んでみてください。
"When you get sick in COVID, and you are in my hospital, I have exactly zero treatments for you that can kill this virus. Nothing we have discoverd in the last 18 months of dealing with COVID-19, zero, nothing. Nothing we have discoverd in the last 18 months of dealing with COVID-19 can kill this virus. Only your immune system can. So when you get here, I'm going to support your immune system as best I can. But I cannot take this cross from your shoulders. Your body's gonna have to fight it yourself. " (中略)"I've said from the very begining, this is going to be a race, this is going to be a race betweem how fast we get people vaccinated and how fast COVID can mutate...."
出典:
PBS NewsHour full episode, Aug. 19, 2021
インタビューをざくっと書き起こしたものですが、読んでみてどうですか。
(単語)
immune system 免疫(系)
cross 十字架(受難や苦痛を指す)
(日本語訳)
「コロナにかかって私の病院に来ても、このウイルスを殺す治療法は全くありません。この1年半コロナウイルスと対峙してきて得た治療法はないんです。ゼロです、皆無なんです。この1年半コロナに向き合ってきましたが、このウイルスをやっつける方法は見つかりませんでした。ウイルスを殺すことができるのはあなた自身の免疫システムだけなんです。ですので、あなたがここにきたら、免疫力を最大限に出せるよう全力でサポートはします。でも、私がこの苦痛を取り除くことはできないんです。あなた自身が戦わなければならないんですよ。」(中略)「私は最初から言ってきました。これはレース(競争)になるんだと。我々が人々にどれだけ早くワクチン接種を打ってもらえるのか、それとも、新型コロナウイルスが変異するのが先になるかのレースになる。」
私の印象に残ったのは下線部の部分です。
レース(競争)といってもF1のレースや自転車レースのような楽しい類ではありません。
こうしている間にもウイルスは変異しているかもしれず、ウイルスと戦えるのは自分自身の免疫力だけで、新型コロナウイルスにはまだ特効薬がないと言っています。現在塩野義製薬が急ピッチで治療薬の準備を進めているようですが、期待できるのでしょうか。
頑張って!シオノギさん!
このインタビューの音源は上記リンクの[35:00]辺りから聴くことができます。
コロナ禍で生まれた新語 "Covidiot" と"Covidiocy"
新型コロナウイルスに対する人々の行動は、対立の原因にもなりました。
人にはそれぞれ考えがあるのでどれが愚かだということを決定することはできませんし、正解はないと思いますが、ある人がコロナ禍で起こしているある人の行動を見て言う言葉に
Covidiot
があります。これは見ての通り
Covid と idiot をくっつけた造語で、コロナ禍で生まれたものです。
参考までに定義を2つ載せておきます。
コビディオット(Covidiot)は、利己的に行動して日用品の買い占めをしたり、パーティーを行なったりしてコロナ禍で必要な意識が欠如してしまっている人を指す言葉である。また、新型コロナウイルスの発生源に関する陰謀論者に対して使われることもある。
私の大好きなCambridge Dictionaryにはこうありました。
出典:Cambridge Dictionary COVIDIOT | 意味, Cambridge 英語辞書での定義
余談ですが、私はオンライン辞書の中で一番 Cambridge Dictionaryが好きです。
辞書の中でも一番見やすく、定義もはっきり書かれていて、たまに他の辞書にはない定義もちゃんとここには書かれていたりするからです。翻訳の仕事の時によく使います。
Covidiotに似た単語にCovidiocyもあります。
品詞が異なるだけで意味は同じ。いずれもコロナ禍での愚かな行動を批判するニュアンスがこめられた単語です。
どこの国にもCovidiotは溢れていますが、自分がそう呼ばれないように気をつけたいものです。
新型コロナにまつわるおまけの表現
最後に紹介したいイディオムがあります。
こんな表現を聞いたことはありますか?
Fiddle while Rome burns
これは神話から出たイディオムです。
直訳すると「ローマが燃えている間にバイオリンを弾いている」という意味。
ローマが大火事になっていたら、懸命に火消し作業をするのが普通ですが、この神話のNeroさんはのんきにバイオリンを弾いていたのです。転じて「緊急事態に対策を立てようとしない」という意味になります。
どっかの国の首相みたいですね。
アフターコロナで「あなたの国の対策はどうだった?」と英語で聞かれたら、以下のように答える人がいるかもしれません。
"Our leaders just fidded while Rome burns(burned)."