晴れ女のわがままジャーニー(人生も旅も)

自由人です。やりたいことをやります。まず、やってみる。

地球一周の旅の通訳だったときの話(12)ウクライナのトロエスコエ村で村人と交流【後編】Praying for Ukraine

ウクライナの後編は私がこのクルーズでアテンドしたツアーの中でも1番思い出深くて、でも、最も自分にとっては過酷で、それでいて楽しかった1日日帰り交流ツアーについて書きます。

You-Know-Whoのせいで全世界が大迷惑して非常に悲痛な暗い気持ちになってしまい、このブログも前回はなんだか暗〜い感じになってしまったので、心痛は否めないですが、自分がここで暗くなっていても仕方がないので、今回は楽しくお届けしようと思いますよ。

前回のお話

ウクライナ2日目は朝早くに出発して、1日がかりの交流ツアーにアテンドしました。

朝早く出発したツアーバスは片道1時間半ほどで目的地に着くはずでしたが、1時間半近く経った時、私はある異変に気がつきました。

アーバスの運転手道に迷う

目的地に到着する頃になると毎回、現地ガイドにあとどれくらいで到着するのかを確認してからツアー客にお知らせするのですが、この日は現地ガイドは港には来ておらず、バス内にはお客さんのほか、運転手(ウクライナ人)とピースボートのツアーリーダーと通訳の私のみ。

運転手に確認するも、「あともう少しで着く」の繰り返し。

あともう少しだと言われてからもう30分を過ぎた頃、私はついに我慢が出来なくなり、いったいどういうことか?と運転手を問いただしました。

そして衝撃の事実が発覚・・・運転手さん自身も行き先を知らないのだということを。。。

ん?どうゆうことっすか?

全く意味がわかりません。

さらに問いただしたところ、なんとこの運転手、すぐ前の車について行っているだけだったのです。

このご時世、そんなやり方ある??

確かに昔はありました。

メルボルンに住んでいた頃、初めての友だちの家に行く時、後ろついていくわ〜!と言って、友だちのダークグリーン色のワーゲンゴルフのあとをついて行っていたことがありました。

でも、友だちの車を追跡していたつもりが、どこかで知らぬ間にそれとそっくりの別人の車にすり替わってついて行ってしまっていて、気が付いたらショッピングセンターに誘導されてしまっていたのです。

ショッピングセンターに着いたときもまだ私は、ついでに買い物でもして帰るのか〜くらいに思っていたのですが、車を降りてみてびっくり!!相手は全く知らない人でした。笑

カーナビなどついていない、スマホもない時代なんてそんなもんでした。

それはそうと、この大所帯のツアーバスの前にもそう言われてみるとさっきまで同じ車がいたような・・・。

でも、もうその車の姿はなく・・・。

突然現れた村長さん

運転手によると、村の入り口付近はちゃんとついていたのだが、その後見失ったとか・・・昔の私と一緒かい!!

プライベートでそれはいいが、ツアー中にそれやったらあかんやろー!

でも、お客さんにバレてはいけない。

ということで、とりあえず、その車に電話連絡せよと促しましたが、電話番号を知らんのだと・・・これにはさすがに参りました。

それまでいろいろと修羅場を凌いできたので、少々のことはなんとかなるかと思ったのですが、そもそも行き先がわからんのでは話になりません。

気をもむこと十数分(もっと長く感じたが、たぶんそのくらい)・・・

頭が真っ白になり心が折れかけたとき、突如一台の車が右側の車線からクラクションを鳴らして伴奏してきました。見るとスーツを着たおじさんが大声で身を乗り出して何か話しかけながら手で合図しています。

相当昔のことですが、私いまだにあの光景を忘れることができません!

大量の日本人を乗せていることがバレてマフィアに誘拐でもされてしまうのか!?

イタリアではマフィアはお上品なスーツを着て一切マフィアには見えないとのこと。チンピラみたいな格好の野郎どもはマフィアではないんだと聞いたことがありました。

嫌な考えがよぎるなか、運転手がバスを停車させました。

止まったバスのドアを開けろーと叫ぶツースのおじさんに従って運転手がドアを開けると、バスに乗ってきたのはなんとこの村の村長さんでした!

村長さんはWhat's going on?と焦る私に自己紹介した後、これから村まで道案内をするとのこと。ほっ。

胸をなでおろしました。

あとで話を聞くと、後ろのバスがいなくなったことに気づいた牽引役のおじさんが村長さんのお友だちだとかで、村長さんに助けてくれと連絡してきたので、村で大型のバスを探して急いで駆け付けたんだと。確かにバスは大きくてこの小さな村では目立ちますが、運良く見つかったから良かったものの、あまりにもアバウトなこの方法・・。

心臓に悪いですわ。

それにしても、行き先がわからず気を揉んだあの地獄の時間が一体なんだったんだろうというくらい、村長さんの突然の登場でなぜかバスのお客さんは大盛り上がり、村長さんもスターよろしく手を振って悠長に答えていて・・・まあ結果的にはよかった!

トロエスコエ村に到着

こうして、約2時間かかって到着したのはトロエスコエ村という小さな集落。

村に着くと、村人の皆さんの熱烈な歓迎を受けました。

この日予定していたツアー日程はこちら。

・パンと塩のセレモニー

・家庭菜園訪問(農作業のお手伝い)

・村を散策

・昼食作り(村人と一緒に)

・一緒に楽しく昼食

とこんな感じです。

うーん、なんだか楽しそ〜う!

私こういうの大好きです。

まず、村の入り口で歓迎の儀式のようなものがあり、パンと塩をもらって食べました。

この村にたどり着けるかどうかも怪しかったので、この時の安堵感は半端なかったのですが、このあとさらになる事件が待ち受けていることは知る由もありませんでした。

家庭菜園訪問のはずが巨大な農場でキャベツと戯れるひとときに

さあ、次は「家庭菜園訪問(農作業のお手伝い)」です。

私のイメージでは小さな家庭の農園を訪れて、一緒に何か野菜でも収穫する程度のものだと思っていました。

でも、到着しました〜と言われて勢いよくバスを降りたものの、菜園らしきものが一切見あたりません!!

????

見えたのはこの景色・・・!??なんなんだこれは!?

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大量のキャベツが並んでいる

あるお宅の家庭菜園と聞いていたのですが・・・想像をはるかに超える大きさで、笑いました!

村で合流した現地のガイドに尋ねました。

私:え〜と、これって・・・家庭菜園ですか?

ガイド:はい、そうです。

私:作業は何をしましょう?

ガイド:お客様なので作業をさせるわけにはいきません。ご自由にご見学を〜。

私:・・・・・。

みたいな感じだったと思います。

いや、そうじゃないでしょ。

みんな農業体験をしたくて来ているのではなかったか・・・だから汚れても良い服装で来てくださいねとツアー前にお客さんには知らせていたのではなかったか?

それがまさかのノーワーク!

またしても一瞬頭が真っ白になりました。

でも、もうどうしようもないので、クレーム覚悟で、お客さんに大量の野菜が収穫されている巨大な農場を自由に見てもらうことに。

それ以外に対処のしようがありません。

村の都合で日程の順番が前後することはあるとは聞いていましたが、中身が変わるとは聞いてなかったぞ。

でも、お客さんは激怒するどころか、巨大な農場にわぁ〜と普通に喜んでくれて、また命拾いしました。

確かに日本にはなかなかない光景ですが、40名弱のツアー客から誰一人としてクレームがなかったのは奇跡でした。心が広くて質の高いお客さんで良かったです。

ウクライナ学校を訪問

ウクライナの母国語はウクライナ語ですが、ロシア語が話せる人もいます。

ですので、ウクライナでの通訳はリレー通訳でした。

村人(ロシア語)→通訳(ロシア語から英語)→私(英語から日本語)→お客さん

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現地ガイドさん(左)、村長さん(右)

ところで、ピースボートの英語の先生であるゲッティーさんたちは通訳(CC)と違って基本的に寄港地は全てフリーで自由行動が許されています。

このツアーにもゲッティー2人が参加していて、そのうちの1人がルーミー(同じ部屋)だったので、私の仕事の様子も含めてたくさん写真を撮ってくれていて、後でくれました。

なんかツアー中の自分の写真って貴重なのでうれしかったです。

上の写真もルーミーが撮ってくれた現地がガイドさんと村長さんの写真です。

村長さんをはじめ村の人々みんなが温かかったのを覚えています。

村内散策では学校や教会を訪れました。

授業参観したこのウクライナの学校では学生がちょうどロシア語の授業をしていました。

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ロシア語を学ぶ学生たち

何が悲しいって、英語ではなくロシア語を一生懸命学んでいたこの若者たちがロシア語の人たちに今攻撃を受けていることです。

同じ語学をする人間として、もし自分が同じ立場になったら(学んでいる言語の国から攻撃されたら)、底知れぬ失望感に包まれるだろうと思います。

何より悲しいです。

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ロシア正教の教会

海外旅行などではなかなか普通の学校を訪れることはないと思いますが、日本と違って面白いところもたくさんあるので、もし機会があったら迷わず参加して欲しいです。

私もオーストラリアと日本しか知りませんが、この2カ国の中学校だけでも全然ルールや教え方、先生の考え方が感じが違うので面白いですよ。

やる気がありすぎてフライングしちゃったウクライナの可愛いお母さんたち!

さて、村内散策も終わり、次はこのツアーのメインとも言える、ウクライナのお宅訪問です。

私たちを勢いよく出迎えてくれたのはかっぷくの良い3人の陽気なお母さんたち!

私はツアー客を家の中に案内した後、すぐ裏に下がってこのお母さんたちとこの日の段取りを打ち合わせしました。

この日、私たちはこの家で一緒にウクライナの餃子を作って食べる予定でした。

ところがここでも予想外の展開に!!!!

お料理体験の作業の場所や段取りを確認しようとしたところ、お母さんたちから勢いよく返ってきた答えはなんと

お料理はもう全部準備ができております!

でした。。。

ガビーーーーーーーーーーーーーーン

でました、まさかの作業完了報告。

またか・・・・。

事前の打ち合わせでは下準備だけしていただいて、お客さんたちが最後に一緒にお料理の楽しいところをやるはずでは・・・私は言葉を失いましたが、この3人のお母さんたちがあまりにも堂々と誇らしそうにしているので、一応理由を尋ねてみると、

「お客さんにお手伝いなどさせられない」とのことだったのです!!

これはどう考えてもツアーの意図がちゃんと伝わってないことから生じたミスなので、お母さんたちを責めるわけにはいきません。

むしろ、心から精一杯のおもてなしをしようと朝早くからずっと40人分のご飯を頑張って作ってくれていたことに感謝すべきです。

ありがとうございます!

と感謝は伝えたものの、このままでは今度は私がお客さんに叱られてしまう。。。

これは通訳の責任ではなくツアーを作った人の責任ですが、お客さんは通訳もガイドも裏でツアーを企画している人も同じスタッフとしてしかみていないため、通訳が矢面に立たされることはよくあることです。というよりもむしろ言葉が通じる人にしか文句をいえないので、自分が砲火を浴びることの方が多いのです。

私は内心焦っていました。

もうすでにこの時2回のワクチンを打ち終えていたので(同じようなことがあったので)、若干の免疫はついてはいましたが、これは心臓に悪すぎます。

さてどうしたものかと頭をフル回転させていると、その時、天から助けが舞い降りました。

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準備した用意を見せてくれるお母さんのうちの1人

屋外から音楽が聴こえてきたのです。

外に出てみると、ブラスバンドが演奏をしているではありませんか。

村長さんによると、このチームは地域の大会で優勝したのだそうです。

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村のブラスバンドが私たちのために演奏してくれました

そして、この歓迎の音楽につられて、数人の村人たちが陽気に踊り始めました。

そこで私は、一旦中に入っていたお客さんを全員外に連れ出して、一緒に演奏を聴いてもらうことにしました。

気がつくと村長さんも踊っており、ツアー客も踊りの輪に紛れたり手を叩いたりと楽しそう!

実はこの演奏は食後に行われる予定だったので、フライング演奏だったのですが、もうそんなことはどうでもよし!

この間に私は急いでキッチンに戻ってお母さんたちに何か作り残したものはないか尋ねました。

お母さんたちは困惑した表情で何もないと言いましたが、ふとその時、餃子の皮が目に入ったのです。

この生地は余ったやつですかと尋ねると、そうだというので、餡はある?と聞くと餡も余っているとのこと。

やった〜〜〜あああ。

じゃあこの生地で残りの餃子を作ってもらいましょうと提案し、急いでお母さんと皮の準備をしました。

みんなたくさん踊ってね〜

まだ家の中に戻ってきちゃだめだよ〜

と祈りながら。

でも、準備した材料は40人分には到底届かず。。。

というとで、一か八か勝負にでました。

外から戻ってきたお客さんたちに私は若干震えながらこう切り出しました。

「これからウクライナの餃子を包む体験ができまーす。体験を希望される方はいますか〜?」

すると、勢いよく手を挙げたのは・・・女性を中心に・・十数名だけでした(涙)。

い、命拾いした。

Thank Goodness...

その後は、何事もなかったかのように希望者をキッチンに案内して体験教室を行いました。

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ウクライナの餃子を包む

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お母さんたちに教わりながら餃子を包みます

こうした相手方との一連の段取りも本来、通訳の仕事ではありません。

でも、前述したようにここではリレー通訳をしていて、ロシア語→英語→日本語になって普段より1枚多く介してしまうので、こちら側のリーダーにまでその伝言ゲームをしていては時間がかかりすぎてラチがあかなかったのです。

そんなわけで、途中からは自分が直談判して段取りを進めたまででした。

そう、あまりに怒涛の展開でリーダーと相談する暇なんてありませんでしたね。

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地元メディアもかけつける

この日は地元のメディアも駆けつけて日本から来た私たちの様子を取材していました。

何人かのお客さんはインタビューにも答えていたようです。

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餃子作りの体験の様子

お母さんたちが手料理を用意してくれます。

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餃子の準備が整いました

餃子を包み終えたら、お母さんたちが用意してくれた他のお料理と一緒に楽しいランチタイムです。

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ベリニキというジャガイモの餃子

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ボルシチ

お料理は、ボルシチ、ベリニキ(ウクライナの餃子)、ロースト肉、ピクルス、パン、リンゴとパンプキンのデザート、ドライフルーツジュース、ローカルワインとウォッカ(自家製)などで、もちろん全てお母さんたちの手料理です!

初めてのウクライナ料理をもちろん私もいただきましたが、とても美味しかったです。

そして何よりもここまでたどり着けてよかった。。。

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みんなでお食事

ウクライナ卵の飾り

お腹もいっぱいになり、お母さんたちともたくさん写真を撮り、もう帰りましょというとき、お母さんの1人が交流の印に私に卵のようなものを手渡してくれました。

綺麗に装飾された卵です。

ウクライナの手工芸品で、手作りの魔除けだそうです。

イースターエッグのようなものでしょうか。

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デザートの横にあるカラフルなタマゴがブイサンカ(左上)

卵と聞いて、割ってしまってはならないと、慎重に慎重に船の部屋でもふんわりしたものに包んで日本まで持って帰りましたが、思いの外丈夫で、今でも東京の自宅に元気にぶら下がっています。

可愛いでしょ。

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10年経ってもしっかり割れないブイサンカ

この卵を見ると、温かかったウクライナのトロエスコエ村の人たちのことを思い出します。

全力で私たちを出迎え、全力でおもてなしをしてくれた村長さんや村の多くの人々には感謝しかありません。

大変なこともありましたが、とても記憶に残る良い体験になりました。

 

そんなわけで、この赤い卵を見ると涙がでそうになります。

心が痛いです。

あの陽気な村の人々がこれからも陽気であり続けられるよう願うばかりです。

早くまたウクライナの人々に笑顔が戻ることを願ってやみません。

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