「 爸爸去哪儿?(パパどこ行くの?)」という番組を知っていますか?
中国で数年前まで放送されていたリアリティー番組です。シーズン6まであります。
この番組、私的にはかなりツボです。
なぜなら日常生活のボキャブラリーや会話がたくさん学べるからです。ついでに、内容も面白いです。
というのも、この番組は、数人の有名人のお父さんとその子供が初めて、「お母さん抜き」で泊まりがけのサバイバルに出かけて、番組側が出す様々な課題を父と子だけでクリアしていくリアルな様子を放送したものです。子供の年齢は5歳前後が多くて、みんなもう人間になっているので綺麗な中国語の文を操るのですが、難しいことは言わないので、私のレベルにぴったりです。これに合わせて、父親も子供目線で子供に話しかけるので、難しい内容は一つもなく、父と子が初めて一緒に料理を四苦八苦しながら作る中で発する何気ない一言や、子供との滑稽なやり取りがとても可愛く、癒されながらも日常生活で必須の表現を学ぶことができます。
こう説明すると、そんな子供の会話なんてHSK5級には簡単すぎるでしょ?と思う方もいると思いますが、そうでもないです。中国で暮らしたことのない自分にとって、このようなリアルな日常会話に接することのできる番組は貴重です。
例えば、
親子達がくじ引きで自分たちが泊まる宿を決める場面があります。宿は村長さんの立派な家から、ボロボロで蜘蛛の巣だらけの家まであり、ドキドキする場面です。この時、
抽签(くじ引き),抽到了(引き当てた)
という単語が出てきます。みんなが口々に言うので状況から何が言いたいのかはすぐに分かります。
また、
実際の家に着いた時、5歳の娘がこんなことを言います。
「不想住这么烂的房子。」
烂(lan4)はボロボロという意味です。こんなボロボロの家には泊まりたくないと本音を言う場面です。この「烂」を私は見かけたことはありましたが、使ったことがありませんでした。でもこの場面で「こう使うのか!」と納得!5歳児が私の先生です。
これはリアリティーショーで24時間カメラが回っているので、こんな場面もありました。
父が6歳ぐらいの息子に
「你是不是放屁了?」(お前おならしただろ?)
すると息子は「今じゃない、これはちょっと前にしたやつだ」と言うのです。なんとも可愛い場面ですが、このくだりは、たとえ中国にホームステイに行ったとしてもこの歳ではなかなか出来そうにない会話です。しかもオナラをするという単語はHSK5級までやっても出てこなかったので、ここで初めて知ったのでした!笑
また、私のお気に入りのアンジェラ(4歳ぐらい?)が砂漠の真ん中で、トイレに行きたくなるのですが、その時父親にこう言われます。
「真的憋不住?」(本当に我慢できんのか?)
するとアンジェラも
「憋不住〜、憋不住〜。」
と繰り返します。憋(bie1)という単語はここでは我慢できない、こらえられないという意味で使っているようです。初めて知りました。
どうですか?
こんな小さな子が簡単に使いこなしている表現を私はまだまだ知りません。
子どもはいろんなものを触りたがります。ちょっと油断するとチョロチョロ走り回ります。そんな時パパたちは「不要摸!(触っちゃダメだ)」とか「别乱跑!(走り回るなよ)」とよく言います。何気ない一言ですが、とても分かりやすいし、何より自分がこの歳でパパたちの言葉を聞いているだけでとても勉強になります。
このように、親子が使う日常用語は、テレビ画面に映し出された子供たちや親子が何を見ながら、何をしながら喋っているかが状況で分かるので、辞書を引かなくても意味が即座に分かり、どう行った場面でどう使うのかがその場面とともに記憶に残ります。
ある時、父親が小籠包を作る時に、
「和、和、和」(he2)→(huo2:下記参照!) と言っていましたが、これは小麦粉をこねることです。))
和面で粉をこねるという意味ですが、実際に生活の中でこれを使ったことがありますか?私はないです。なので、この番組を見ていなかったら、将来誰かに自分の趣味であるパン作りを中国語ネイティブの方に教えるとき、パッと出てこないでしょう。もちろんHSK5級の問題に出てきたことはありますが、実際に使ったことがないので、活字でしか認識できず、音としての認識は思った以上に難しいのです。そうした単語は記憶の奥の奥底にしまわれてしまいます。それが、この場面を見たことで、静かにデビューしたわけです。
そう、
テレビを見ることで、仮想体験ができてしまう。
語学学習にとって大いにプラスです。
かつて私は「90210」ビバリーヒルズ高校白書でかなり英語を覚えました。そこで覚えた表現はいまだにそれぞれその表現が出てきたシーンと共に覚えています。
例えば、スティーブが
I'm on top of it!(意訳で、まかせとけーい)
と言うシーンなんかはかなり典型的です。スティーブはそう言いながらよくやらかしてしまうのですが・・・。
余談になりましたが、
視覚で得た情報とそこで発せられた音を結びつけると、記憶率はかなりアップするのではないかと私は勝手に思っています。
テレビによる仮想体験、語学にはオススメです。
*6/20追記:he2は「と」の意味で、「こねる」の意味の発音はなんとhuo2でした!!!今朝中国語の先生と話していて発音を直されて発覚!人間の思い込みって怖いですね。お詫びして訂正いたします!